2021年秋~熊本城を歩く
2021年秋も終わりに近づいたある日。
熊本在住のスタッフが熊本城へと行ってきました。
熊本城は別名「銀杏城」。
この時季、天守閣前の広場では、大銀杏の葉が色づいているはずです。
黄葉を写真に収めるとともに、2016年の震災から5年が過ぎた“今”のお城を見てみたいと思いました。
※記事中の画像はタップすると大きな画像で見ることができます。
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駐車場から入り口へ向かう途中、二の丸広場からは天守閣が一望できます。
向かって右から大天守、小天守、宇土櫓。
ここから見るお城は好きな景色のひとつです。
石垣の上で倒れたままになっている塀が痛々しいですが、以前は天守閣と並んで巨大なクレーンが立っていたことを考えると、随分と元の姿に近づいた気がします。
さて、入園券を買い、いよいよ入場。
このところ熊本市内は感染者ゼロの日が続いていますが、感染対策はしっかりとられています。
観光客の皆さんも係の方の指示に従い、粛々と協力していました。
券売所の隣に肥後六花のひとつ肥後菊が展示されていました。
肥後六花は武士の精神修養として始まっただけに、佇まいにどこか凛としたものを感じます。
さらに歩を進めると、復旧作業に伴い仮設されたスロープの先に、黄金色の大銀杏が見えてきました。
遠くから見ても大きい!
思わず胸がワクワクします。
はやる気持ちを抑え、スロープを上る前に天守閣をパシャリ!
天守閣前広場とは反対側から見上げる熊本城。
青い空に黒と白の天守が映えます。
武者返しの石垣も美しいです。
そしていざ、天守閣広場へ!
インスタグラムでご紹介した写真です。
この銀杏は熊本城を築城した加藤清正公のお手植えと伝えられるもの。
西南戦争の折の出火で天守もろとも燃えてしまいましたが、焼け跡から新しい木が芽吹き、今の大きさまでなりました。
とにかく見事のひとことに尽きます。
撮影中の私の周りでもたくさんの人が写真を撮っています。
皆さん一様に「すごいねえ」「素晴らしいねえ」と口にされるので、なんだか自分まで誇らしい気分になりました(笑)
やはり熊本城は県民の誇りですね。
大天守に登ろうか思案しましたが、折から「秋のくまもとお城まつり」が開催されており、平日とはいえ結構な人出です。
いずれ日を改めて登城することにし、大人しく帰宅の途につきました。
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今年の春に天守閣の復旧工事が終わり、観光客も戻ってきた熊本城ですが、訪れてみれば、いまだ震災の爪痕は至る所に深く残っていました。
たとえば
天守閣の近くに建つ国指定重要文化財の「宇土櫓(うとやぐら)」。
倒壊こそ免れたものの傷は深く、現在も中に入ることはできません。
ひび割れた壁。
雑草が生えた屋根……。
周りに人影もなく、寂しさが漂います。
ここは「元太鼓櫓(もとたいこやぐら)」という建物があった場所だそうですが、ご覧のとおり今も瓦礫の山です。
こういう場所がそこかしこに見受けられました。
また、城内にはあちらこちら、小石を詰めたケージが置かれています。
中に入っているのは「栗石(ぐりいし)」といい、崩れた石垣の一部です。
普段目にする大きな石が積まれた石垣は、実は外側の部分。
内部には小さな栗石が大量に詰め込まれています。
崩壊し流れ出た栗石は、このように全て保管されているのです。
熊本城総合事務所にうかがったところ、石垣復元の際にはこれらの栗石も元どおりに詰めなおすとのことでした。
「大変でしょう?」と尋ねたら「1個1個が大切な文化財ですから」との答えが。
この先の気の遠くなるような作業量を想像すると、ただただ頭の下がる思いがしました。
地震直後の惨状を知っている身からすると“今”の熊本城は「よくぞここまで復旧した」と思える一方、「まだまだ道は長い」と改めて思い知らされるものでした。
しかし、復旧作業が行われている“今”だからこそ味わえる風景もありました。
前述の仮設スロープから見た大銀杏の木。
上り坂の先、大銀杏が空を覆わんばかりに聳え立つさまは、息をのむような迫力でした。
いずれ仮設スロープは撤去されるでしょう。
そうすればこのアングルから銀杏を眺めることはできなくなります。
震災があったからこそ出逢えた風景。
それはそれで、大切にしたいと思いました。
日に日に作業が進み、姿を変えていく熊本城。
次に訪れたときは、また違う表情を見せてくれることでしょう。
最後になりましたが
訪れた日も城内で復旧作業を行っている方々がいらっしゃいました。
現場の工事関係者をはじめ、専門家、職員の皆さま、復旧作業に関わる全ての方々の努力には感謝の言葉しかありません。
心より、ありがとうございます。